2011.11.13 マイケル・サンデル③ 2011年4月22日
日本はすばらしい国です。
旅行に来る外国人に聞けば、「日本は何処が悪いですか?」と聞くと
そんな簡単に例を挙げられないでしょう。
民主主義社会で自由平等です。
空気も水も綺麗です。生活の環境が安全で静かです。交通が便利です。
目にするものも、手に触るものもみんな品質もいいものばかりです。
食事も美味しくかつ健康的で、温泉もすばらしいです。
人が優しく礼儀正しく、至るところにサービスが満杯です。
逆に中国のほうは一党独裁で、自由も平等も公平もありません。
空気も水も環境も汚い、食料品も不安全だし、ルールも秩序も礼儀も無く、
日本から見れば混雑かつ暗い世界に過ぎません。(でした?)
例を挙げたら、切がなくなるでしょう。
そのような中国からやってきた一人の女性が、日本で5,6年ぐらい勉強してから、
一年半前に帰国しました。
彼女は官僚やお金持ちの子供ではありません。日本で留学している費用は全部
自分で稼いでいました。
二胡が弾けるおかげで、日本でのバイトの収入は普通のOLよりやや
高いかもしれません。
中国に帰ると、月に何万円ぐらいの収入しかありません。
彼女はチャイナリニアの以前の二胡講師――宋碩です。
この間に彼女と電話で話すとき「どうですか、もしあの時に戻れれば、
もう一度選択してもらえれば、どちらを選択しますか。」と聞きました。
帰国するとき、大分悩みました。
「もちろん帰国を選択します。日本という国には“虐待”か、“虐待される”
かどちらかしか存在していません。気分的には爽快に生きることは出来ません。」
と言いました。
そんな彼女は日本に対してまとめた言葉はこれです。
もちろん人間は立場や角度が違うと、感じたものも違います。
彼女が言っている“虐待”は虐待の本当の意味ではないはずです。
(10年前なら、私達にはこのぐらいの選択肢さえも無かったでしょう。)
日本は嫌い?いいえ嫌いではありません。
日本が好き?いいえ好きではありません。
これは私の答えです。
一体何何ですか?
分かりません!
非常に言葉で表現しにくい感覚です。
日本の文化と同じような曖昧で白でも黒でもない灰色の感覚です。
せっかく日本のようなすばらしい国で生まれてきたのに、
自殺なんて考えられますか。しかも自殺も集団でやります。
一円も持たずに、日本にやってきた中国人の留学生は
どれほどいるでしょう。
学校もバイトも返済も家へ仕送りも全部取り遂げなければなりません。
みんなやり遂げていました。
自殺するなら、どちら先でしょうか。
上海に転勤した日本人の生徒から聞いた言葉では
「上海の若者は元気がある。」
これほど自由自在な国なのに、若者は元気がないと
おかしく思いませんか。
ちょっとだけのことでわけが分からないぐらい涙がぼろぼろになるほど
優しい人間社会なのに
人を死ぬまで追い詰めていじめるなんて、信じられますか。
こんな青空の下で、自由が漂っている空気の中で、おどおどして、
疑心暗鬼している日本人はどれほどいるでしょう。
宋さんが言っている形の見えない“虐待”は一体何何なでしょうか。
この社会を蝕んでいるのは一体何何でしょうか。
比べると放射能は怖いものではありません。
原子力を収束することは至急ですが、
同時に収束すべきものもあります。
それは日本人にとって、これから大きな課題になるでしょう。
2011年4月22日